理事長所信
理事長 清水 俊佑
基本理念
主動共創
~Come together!~
基本方針
- 連携が織りなす魅力ある地域の創造
- 未来を創る人材の育成
- 新たな躍進に向けた組織の再考と構築
主動共創
さいたま市が誕生する2001年より10年以上前、当時の大宮・浦和・上尾・与野の各青年会議所メンバーは「真の自立都市実現」という理想を高く掲げました。地域の未来に対し圧倒的な当事者意識を持ち、行政合併に先駆けて1996年に4 つの青年会議所が解散し、新たに「埼玉中央青年会議所」が誕生しました。(岩槻青年会議所は解散後2005年に合流)。その後さいたま市は政令指定都市となり、上尾市、伊奈町と共に人口が増え続ける地域になりました。しかしその発展は、未だ首都東京に依存しているものであり、職・住・遊・学の高次都市機能を享受できる自立都市の実現には、まだまだ道半ばです。
2020年から始まったコロナ禍を経て、国や地方行政の在り方、既存の仕組みやルールについて、多くの問題が浮き彫りとなりました。しかし、あの時感じた違和感や疑問が、日に日に薄れていくのを感じています。また、改善が見られない少子高齢化や失われた30年と言われる成長なき経済など、閉塞感も漂っています。世の中が混沌としているように感じていても、それを自分事として考えることができない空気が、私たちを覆っています。こんな時代こそ、地域には青年会議所が必要です。なぜなら私たちは、混沌という未知の可能性を切り拓き、先駆けて動いてきた団体だからです。自らが地域の政治、経済、教育、行政などに当事者意識を持ち動く『主動』が不可欠であり、市民や地域の諸団体と共に学び、未来を考え、まちを創っていく『共創』が必要です。それこそが私たちがすべき青年会議所運動なのです。
連携が織りなす魅力ある地域の創造
私たちが活動する、さいたま市、上尾市、伊奈町は共に人口が増え続けてきたエリアであり、約160万人もの人々が住み暮らしています。住みやすいまちへと成長を遂げ、先人たちから脈々と受け継がれてきた歴史、文化、スポーツなど様々な魅力に溢れています。一方で他の地域からの人口流入が多く、このエリアに対する関心や愛着を高めていく余地があります。地域市民一人ひとりが「自分たちのまち」という意識を持ち醸成していくことで、多くの人に地域の魅力を発信し、地域のことを自分事として考えるようになります。特に外国人の転入超過数は全国的にも多く、3万人近い外国人の方が共に住み暮らす地域となりました。同じ地域市民として、共に地域の魅力や現状の課題に目を向け交流することで、地域市民の一員であるという一体感が生まれます。
青年会議所のまちづくり運動の効果を最大限に高めるためには、行政や企業、地域諸団体との連携は不可欠です。私たちがどんな団体であるかを継続的に発信し、関係性を強め相互理解をさらに深めることで、地域に新たな価値や魅力を生み出していきます。また、広域まちづくり運動を推進する団体として周辺の青年会議所と連携し、若い世代の夢の実現や地域の魅力発信、先進的なまちづくりに向け、行政の枠組みに捉われず、広い視野を持って運動を展開していきます。
現在の世代別人口比率を考えると、若者に「選挙に行こう」と呼びかけ投票率が上がっても、若い世代の声が行政に届かず、世の中は変えられないという論調があります。その通りかもしれませんが、あくまで既存の仕組みやルールの上での話であり、新しいルールを考えよう、作ろうと動き出す人が増えれば、社会を変える大きな波になります。これまでの教育や実体験では、日常で起きていることを自分事として捉え、より良く変えていくという体験が不足しています。また、国や自治体がどのようにルールを考え作っているのか学んだり、政治を身近に感じたりする機会が不足しています。若者が身近な学校のルールについて、当事者意識を持って考え行動したり、現役の政治家と関わりを持ったりする経験は、必ずその後の人生を豊かにするだけではなく、地域がより良い方向へ進む原動力になります。過去の災害時や緊急事態の際に、JCの真価が発揮されてきました。2011年の東日本大震災の時には埼玉中央青年会議所が、さいたまスーパーアリーナに避難してきた方々に向けていち早く炊き出しを実施しました。その行動力やノウハウ、ネットワークは全国の青年会議所にもあり、数々の現場で活かされています。南海トラフ地震、首都直下型地震、富士山噴火など、いつ発生してもおかしくない身近に迫った脅威に対し、平時の今だからこそあらゆる場合を想定し、いかなる状況にも対応できるよう、私たちに何ができるかを見直していきます。また、私たちの活動エリアは、災害に比較的強い地域であるからこそ、首都のバックアップ機能を担う地域として、迅速に動けるように常に準備もしていなければなりません。
未来を創る人材の育成
「人づくりはまちづくり」という言葉の通り、地域の未来を創っていくのはそこに住み暮らす人々であり、人々の成長がまちの成長や発展に繋がります。特に子供の成長は学校や家庭だけではなく、様々な体験を通して育まれるものであり、そこには必ず大人との関わりがあります。その関わりの中で、子供たちが道徳心や規範意識、他者を尊重し思いやる心を学び、また子供たちの学んでいる姿から大人も刺激を受け、共に成長していきます。
埼玉中央青年会議所はJCIという国際組織の一員であり、世界と繋がりを有する団体です。私たちだからできる交流の機会の提供、地域を巻き込む運動を展開することで、国や地域の枠を超えた人と人との関わりが生まれます。子供たちが多様な価値観や日本とは違う文化に触れ交流する体験は、豊かな心を育むだけでなく、自分たちの地域の魅力や郷土愛に気づき、醸成することにも繋がります。
私たちの地域に青年会議所が設立されてから60年以上に亘り、私たちは政治、経済、行政など様々な業界に、明るい豊かな社会の実現を目指し、地域を牽引する人材を多く輩出し続けてきました。では今後、どのような能力を持った人材が地域に必要なのでしょうか。先行きが不透明な時代、AI技術の進化が目まぐるしい現代においても、求められるリーダーの本質は変わりません。人と人とが関わり合い、価値を創造し続けていく以上、そこにはコミュニケーションを通しての人間関係の構築が不可欠です。また、物事を「判断する」ために必要な能力は、AI技術や情報技術の発展で、人間でなくてもできる時代が来るかもしれません。しかし「決断する」ということは、人間にしかできないことであり、リーダーは決断をするための胆力を身につける必要があります。
青年会議所は様々な価値観を持った人が集まり、歩みを進めていく団体です。40歳という年齢制限があるからこそ、組織の新陳代謝が促進され、毎年新たな価値を創出する高い行動力、実行力を有する組織であり続けます。多様な価値観があることを認め、尊重し合いながらも、同じ時間を共有し同じ志を持つ仲間を作ることは、個人の人生を豊かにし、団体の継続、発展にも重要な要素になります。会員拡大こそ、私たちの理念を地域に広めていくための青年会議所運動の根幹です。また、新たに仲間になったメンバーには、青年会議所の基礎知識や40歳までの限られた期間でしか得られない活動の魅力を伝えます。また先輩方が積み重ねてきた経験や団体の軌跡を紐解き、メンバーが胸に刻むべき志を引き継ぐ機会を作ります。
新たな躍進に向けた組織の再考と構築
組織の中に、互いを高め合う刺激や共感を伴うコミュニケーションがあることで、メンバー同士の絆は深まります。青年会議所で得られる様々な機会や親睦の場を通して、互いの魅力や志を知っていくことで共に活動する意欲が向上し、多くのメンバーが集う場が増えれば増えるほど、活力溢れる団体になっていきます。またメンバーが団体に対する帰属意識や愛着心を持つことで、団体が持つ力は、より一層強くなります。まず自分たちが埼玉中央青年会議所に興味を持ち、当事者意識を持って自分たちの手で団体を再考し構築していくことが大切です。
2008年末に社団法人から公益社団法人と一般社団法人という新たな枠組みができ、各地会員会議所においても公益と一般の選択の機会が生じました。埼玉中央青年会議所が公益社団法人格を取得してからおよそ10年が経過した今、取得当初の主旨を達成できているのか、他団体や他の青年会議所の事例等を鑑みた上で、魅力ある団体として持続的に発展するための最適な法人格について考え、道筋を示す必要があります。また、現行の団体運営の方法を、規程から見直す機運も高まりつつあります。まずは組織の概要や仕組み、現行の決まりができた背景を知った上で、世の中が変わっても変えてはいけないもの、世の中の変化とともに変わっていくべきものを見極め、青年会議所運動を効果的に展開できる運営体系を模索していきます。
青年会議所活動の基盤となるのは会議です。運動の効果を最大限に導くためには、質の高い会議運営が重要となります。会議では厳粛なルールのもと、予算が適切に使われているか、法令や規則が守られているかを確認することはもちろん、過去の事業報告から得られる経験値や理事の質の高い意見や質問によって、建設的な議論がなされ、意思決定を行っていきます。
青年会議所には、「自己の修練・社会への奉仕・世界との友情」という三信条があります。それぞれの信条を体現するための機会を、メンバーに提供することが団体の使命です。しかし、与えられた機会もメンバーがそれを掴み活かさなければ意味がありません。埼玉中央青年会議所の例会や事業だけではなく、JCIや日本青年会議所、各協議会の各種大会、事業にも積極的に参加するべきです。また、青年会議所には出向という大きな機会があり、私たちはこれまでも多くの出向者を輩出し、その経験や人脈を団体や地域へ還元してきました。引き続き出向の機会を最大限に活かし、多くの学びの機会を提供します。出向を通して得た知識や経験、友情がさらなる個人の成長・団体の活性化に繋がり、地域へより大きな運動を展開する土台となります。理念や志に対して共感を得るためには、まず知ってもらう必要があります。これは、地域に対してだけではなく、メンバーに対しても同様です。対内外のブランド力を高めるための手法は数多くありますが、埼玉中央青年会議所が有する行政から委嘱されている役割など、様々なリソースを活用しきれていないのも現状の課題であると考えます。先輩方が培ってきた埼玉中央青年会議所ならではのリソースを見直し、さらにブラッシュアップすることが必要です。
埼玉中央青年会議所は2025年に創立30周年という大きな節目を迎えます。これまで私たちが活動することができたのも、行政や企業、地域諸団体や地域市民の皆様の協力をいただきながら、先輩方が地域に対して、持続的に運動を展開し続けてきたからにほかなりません。2015年の20周年に中期ビジョン「ビジョン2015」が策定され、「ひとづくり・まちづくり・組織づくり」を3 本の柱としてこれまで運動を展開してきました。2017年度には公益社団法人日本青年会議所第66回全国大会埼玉中央大会の主管をやり遂げ、2022年度には全国大会5 周年の記念式典を開催することができ、改めて埼玉中央青年会議所の成長と未来への希望を発信することができました。本年度はこれまでの運動の成果を検証するとともに、設立趣意書、創立宣言文にも立ち返りつつ、今考え得る未来を見据え埼玉中央青年会議所が目指すべき新たな中期的展望を作成します。また、地域に必要とされ輝き続ける団体となるためには、常に新しい挑戦に取り組み、地域にインパクトを与えていかなければなりません。翌年迎える30周年にふさわしい運動や事業の実現に向け動き出す、重要な年と捉え活動していきます。
おわりに
「政動社変」という造語があります。これは2017年度日本青年会議所会頭の青木照護先輩の言葉です。「JCは政治を動かし、社会を変える団体でなければならない。」この言葉に、入会1 年目の私の心は大きく震えました。ワクワクしました。JCの可能性の広さ、奥深さを感じました。30代のまだ何者でもない自分に、何かできることがあるかもしれないと感じさせてくれました。これが私のJCの原点です。青年会議所に対し、この地域に対し、国に対して、自分の40歳までの限られた時間を、当事者意識を持って注ぎ込むことで、新たな自分を見つけられるのではないかと本気で思い、過ごしてきた7年間です。
その中で出会ったのは、地域の未来を思い「真の自立都市実現」を目指し、「廃県置州などの広域まちづくり運動は、まだ道半ばである」と私たちに語り掛ける先輩方、地域の未来を思い全国大会の誘致や実現に向けてひたむきに走り続けた先輩方、そして仲間の未来を思い共に悩み、語り合い笑い合う同志達でした。
青年会議所は“私たちがやらねば誰がやる”という「圧倒的な当事者意識」とメンバー一人ひとりの「利他の精神」が集まった、自主自立している団体です。だからこそ自分たちの存在意義を常に問い続け、「JCだからできること」「JCでないとできないこと」を語り合い、実現していくことでメンバーはJCに誇りを持っていくのです。失敗したっていいじゃないか。何者でもない私たちだからこそ、自分たちの心躍るような未来を描き、やりたいようにやろうではないか。JCこそ混沌を突き破る、光輝く燈火でなければならないのです。