理事長所信

理事長 高子 景

基本理念

Beyond Expectations
~未来への挑戦~

基本方針

  1. 未来へつなぐ国際都市への挑戦
  2. 持続可能な地域社会への挑戦
  3. 果敢に挑戦する人材の育成

はじめに

 私たちが目指してきたのは真の自立都市の実現です。その手段のひとつとして埼玉県で初となる政令指定都市設置を目標に掲げ、机上の政策提言にとどまらず、実際に政策を実践するため、埼玉中央青年会議所が創造的変革の一環として設立されました。この行動は、希望をもたらす変革の起点となり、地域社会に英知と勇気と情熱を注ぎ込むJAYCEEの模範的行動であり私たち現役世代にとっての誇りのひとつです。

 その後、新たにこの地域に誕生したさいたま市は、速やかに政令指定都市へと移行し、上尾市、伊奈町を含む私たちの活動エリアは150万人を超え、人口規模でみれば国内でも有数の大都市へと成長・発展を遂げました。しかし、真の自立都市への道のりはまだ続いており、世界的に見れば私たちの地域は、世界最大のメガロポリスである東京の一部であり、名前も広く認識されていません。

 今後、グローバルな都市間競争がさらに激化すると予測される中、私たちの活動する地域も世界を見据え、国際都市へと成長発展することが、持続可能な真の自立都市の実現には必要不可欠です。

 創立から30年の節目を迎える今、私たちは創始の精神に立ち返り、この地域に対して、そして私たち自身に対しても、新たな創造的変革をもたらす必要があります。

未来へつなぐ国際都市への挑戦

 私たちが住み暮らす地域は、いまだ東京へ過度に依存している状況にあります。多くの住民は東京へ通勤し、そこで働くため、地域経済の独立性が弱まっていることが指摘されています。また住民の長時間通勤は生活の質を低下させ、日本短い睡眠時間や首都直下地震時には多くの住民が帰宅難民となることが予測され、過度な東京依存が経済や生活に大きな影響を与えることが懸念されています。

 この状況を改善するためには、交流人口の増加が重要です。交流人口の増加は地域への関心を高め、関係人口の増加に繋がり、地域経済の活性化や都市基盤の整備に寄与します。

 そして都市の国際化は、交流人口の増加に不可欠な要素です。グローバル化が進む中で、都市が国際的な魅力を持たない限り、競争力を失い、経済の停滞や文化的孤立に直面する危険性があります。国際化は文化的多様性を促進し、国際的なネットワークを形成し、まちづくりに国際的な視点を導入することで、都市を訪れる人々にとって魅力的な環境を提供し、交流人口の増加を確実にする鍵となります。

 今年は創立から30年を迎える節目の年。次の10年に向けて、私たちは国際的ネットワークを先導する組織として、青年会議所のスケールメリットを活かして国際交流をさらに促進し、地域の魅力を海外に広く発信していきます。これにより、新たな関係人口を形成する基盤を築き、この地域が世界へ向けて飛躍するための新たな一歩を踏み出します。

 また、国内に目を向けると特区制度による規制緩和やデジタル化の推進にもかかわらず、基本的な構造改革は進んでおらず、東京一極集中の流れを止めることはできていません。それは今までの改革が対処療法的であり、抜本的な制度改革には至っていないからです。

 一方で大都市が独自の権限を持ち、東京に対抗するために、特別自治市等の大都市制度改革の機運が高まっています。私たち青年会議所は、この地域の未来を見据え、どのような自治制度が真の自立都市として発展するために必要であるかを常に学び、この地域のあるべき姿を示し続ける必要があります。それこそが、自立都市の実現を目指した創始の精神を継承することにつながります。

 創立30周年を迎えた今、私たちが目指す新たな都市像やまちづくりの目標について、行政関係者をはじめとする地域諸団体や地域市民に示すことで、この地域の未来を先導する組織として、今一度未来に向けた新たな一歩を踏み出せるのです。

持続可能な地域社会への挑戦

 私たちが住み暮らす地域は、魅力に溢れています。しかし、多くの地域市民は、他の都市と比較して自分たちが住み暮らす地域に対する自信や誇りを相対的にみて持っているとは言い難い状況にあります。日本人としての謙虚さは美徳とされていますが、それが市民としてのシビックプライドの形成を妨げてしまっているように感じます。私たちの活動地域では、都市化が進行する中でも豊かな自然が保持されており、それが優れた住環境を提供し、良質な生活都市としての評価を受け定住人口の増加が続いています。一方で、歴史的資産や文化的資産、食文化が豊富であるにもかかわらず、これらの魅力が十分に活かされず、交流人口は低い水準が続いています。私たちはこの地域の潜在的なポテンシャルをさらに引き出し、活用することで誰もが訪れたくなる魅力的な都市への足掛かりとします。

 また、高齢者優位の民主主義が社会保障制度改革を阻害し、社会制度の硬直化と閉塞感を招いているとの指摘があります。我が国では価値観の押し付けとの批判を恐れ、政治的中立性への配慮から、一般的な政治的議論が社会から排除されてきました。それでも、若者の意見を政治に反映させるためには、若者世代の政治参画が非常に重要です。とくに埼玉県の投票率の低さは全国でも突出しており、政治参画への意識の低さが露星しています。若者世代の投票率を上げることで、若者の意見を政治に反映させるために大きな影響を与えることができます。そのため、より多くの若者が政治に興味を持つための機会を提供し、投票率を底上げし、政治参画を促します。

 さらに、私たちが実施する事業をより大きな運動へと発展させるためには、幅広い層との連携が必要不可欠です。異なる組織や個人が連携し、多様な背景や視点を持つ人々との協働が、より大きな社会的変革を実現する鍵となります。多様性を導重し、さまざまな文化や経験を持つ人々との連携を実現することで、包括的で持続可能な変革を目指します。

 また連携は単なる手段ではなく、目指す変革において真に必要な連携を促進することが重要です。青年会議所だけでは地域全体を変えることはできません。市民、行政機関、そしてさまざまな組織と協力し、より大きな運動を展閑していきます。

 そして、コロナ禍の影響により、社会での孤立が深刻化し、若年層の自殺者数の増加、ヤングケアラー問題の顕在化、出生率の減少といった社会課題が浮上しています。私たち大人は、子どもたちゃ若者たちが社会から孤立せず、安心して成長できる環境を提供する責務があります。多くの子どもたちや若者たちが、様々な体験を通じて、日本人としての誇りや自覚、創造性と多様性に溢れる価値観を育むことが、自己肯定感や自己有用感を高める鍵となり、次世代の地域を担う人材育成につながります。これらの経験は、彼らが幸せな状態(Well-being)で成長するための基盤をつくり、こどもまんなか社会の実現に貢献することができます。

果敢に挑戦する人材の育成

 青年会議所が地域社会にとって欠かせない存在として選ばれ続けるためには、時代や社会の先頭を切って、自分たちにしかできないことを見つけ出し、果敢に挑戦し続ける人材を輩出し続けることが必須です。そのためにも、会員の拡大は極めて重要であり、埼玉中央青年会議所がこれまで紡いできた歴史を未来へと引き継ぐためには、全員が高い拡大意識を常に持つことが重要です。さらに、多種多様な成長の機会を早期から提供することで、失敗を恐れない強靭な精神と、枠にとらわれない柔軟な発想を持つ、誇り高きJAYCEEに成長することができ、青年会議所を通じてさらに多くの時間を地域課題の解決につなげることが可能となります。

 また、質の高い活動や運動は、私たちの個々の知恵や能力だけではなく、議論や意見交換の中で育まれます。青年会議所は、様々なバックグラウンドや考え方を持つメンバーが集まり、意見を出し合いながらより良い方向に向かって進んでいく場です。そのため、効率的な会議運営や組織運営が重要となります。多様な意見を取り入れることで、より建設的な活動や運動を実現していきます。

 その上で、私たちは青年会議所が、青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダー シップの開発と成長の機会を提供する団体であることを忘れてはいけません。それは地域での活動に留まらず、青年会議所のネットワークを活かし、出向や各種大会への参加など、より多くの成長と発展の機会にメンバーが参画しやすい状況を整える必要があります。このような機会は、個々のメンバーがリーダーシップスキルを磨き、新たなアイデアを獲得し、地域社会においてより積極的に貢献するための重要な経験となります。

 さらに、広報活動は、青年会議所が取り組む活動に関心を持つ様々な団体や地域市民から共感を得るための有力な手段です。広報活動を通じて、青年会議所の価値観や理念が広く社会に浸透し、共感を呼び起こすことができます。また、SNSの発展によってオウンドメディアの重要性が増している中、会員一人ひとりが適切なリテラシーを学び、それを活用することで、より多くの共感を得ることができます。広報活動を通じて青年会議所が社会との連携を深めることで、共通の目標を実現するための原動力とします。

結びに


「綺麗事では社会は変わらない」

「待っていても英雄は現れない」

「リスクを取って自分たちが社会を変えろ」


 2021年、日本青年会議所サマーコンファレンスにおいて、フォーラムの講師である福岡市長の高島氏が語られた言葉が今でも忘れられません。この言葉は、私たちに行動の重要性を強く訴えかけました。この閉塞感が蔓延している日本社会において、私たちが社会を変革するための挑戦をせずして誰がするのでしょうか。今まさに、自治体合併に先立ちこの埼玉中央青年会議所を創設した先輩諸兄姉のように、リスクを取ってチャレンジする人が尊敬される国へと変えていかなければなりません。

 そして、メンバー一人ひとりが青年会議所を通じて、地域に対する想いや夢を実現していくことが、必ず明るい豊かな社会を創造するための礎になると信じています。私は、青年会議所がそのような夢や想いを実現する場となり、メンバーが自己実現を果たすための絶好の機会であって欲しいと強く願っています。私たちが青年会議所で学び、成長し、活動することで、地域の未来に明るい光を灯すことができるのです。だからこそ、「どんどん青年会議所を活用しよう!」という思いを共有し、行動していきたいと考えています。

 2025年は私たちにとって30周年を迎える重要な年です。私たちの力を結集し、地域社会に新たな価値をもたらすために、この30周年を創造的変革の年とします。